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Study

GYNアトラス第1節

執筆協力者への謝辞
Suzanne M. Werneke, BA, CT(ASCP)

細胞検査士、Kurt Douglass氏(ASCP)には、当初よりこのプロジェクトを達成させるための多大な努力と、今日もなお使用されている「ThinPrep Morphology Reference Manual」初版への意欲的な取り組みに、敬意と感謝の意を表します。また、細胞検査士、Mike LeDonne氏(ASCP)には、アトラスに掲載された初期デジタル画像を多数ご提供いただきましたことに感謝いたします。

われわれのスケジュールに合わせ、精力的にご協力してくださった客員編集者の皆様お一人お一人に、お礼を申し上げます。病理医および細胞診検査士の方々には、多くのことを学ばせていただきました。細胞診断学の分野に高い関心をお持ちであることに大変感謝しております。さらに、その熱意には敬意を表したいと存じます。

最後に、アトラスにはどこにもお名前が掲載されておりませんが、編集責任者である細胞診検査士、Charlotte L. Brahm氏(ASCP)には完成のために根気強くご尽力いただきお礼を申し上げます。

執筆者
Raheela Ashfaq, MD
Professor, Department of Pathology, University of Texas Southwestern Medical Center, and Director of Cytopathology and Oncodiagnostic Laboratory, Parkland Health and Hospital, Dallas, TX

R. Marshall Austin, MD, PhD
Medical Director and Director of Cytopathology and Gynecologic Pathology Services, Coastal Pathology Associates, Charleston, SC

John M. Bauer, MD
Medical Director, Piedmont Pathology, Incorporated, Hickory, NC

Diane D. Davey, MD
Professor of Pathology and Laboratory Medicine, Director of Cytopathology and Bone Marrow Service, Director of Cytopathology Fellowship Program, University of Kentucky, Lexington, KY

Luis A. Diaz-Rosario, MD
Medical Director, Anatomic Pathology, Quest Diagnostics, Incorporated, Tampa, FL

Martha L. Hutchinson, MD, PhD
Associate Professor Pathology, Brown University, Providence, RI

Deanna K. Iverson, MHS, SCT(ASCP), HTL
Pathology Manager, Palo Alto Medical Foundation, Palo Alto, CA

Joyce E. Johnson, MD
Associate Professor, Department of Pathology, Director Division of Education, Vanderbilt University Medical Center, Nashville, TN

James Linder, MD
Medical Director, Hologic, Inc., Marlborough, MA; Professor, Pathology and Microbiology, University of Nebraska Medical Center, Omaha, NE

Jacalyn L. Papillo, BS, CT(ASCP)
Cytopathology Manager, Fletcher Allen Healthcare, Burlington, VT

Pamela Smith Piraino, CT(ASCP)
Clear Path Diagnostics, Syracuse, NY

Richard A. Smith, MD, PhD
Chief of Pathology, Sturdy Memorial Hospital, Attleboro, MA

Zahniser, David, PhD
President, Diagnostic Vision Incorporated, Wellesley, MA

はじめに

本アトラスは、細胞診断と病理検査で、ThinPrep® Pap Test以下ThinPrep法を用いる婦人科細胞診解釈の習得と熟練の一助となるよう意図されたものです。サイティック社のThinPrep法の初期の研究開発は、従来からあるパパニコロー染色法との比較に基礎を築きました。それ以来、世界中の臨床現場で細胞診と病理検査に関して、この基礎を洗練させることができました。本アトラスは、ThinPrep法の使用者が指導用ツールおよび現行の基準に利用できるよう意図されたものです。

アトラスの構成は、ベセスダシステム(Bethesda System)に対応しています。ベセスダシステムとは、国立がん研究所で開発され、Robert J. Kurman氏およびDiane Solomon氏が「The Bethesda System for Reporting Cervical/Vaginal Cytologic Diagnoses: Definitions, Criteria and Explanatory Notes for Terminology and Specimen Adequacy」(New York:Springer-Verlag,1994)のなかでまとめたものです。Bethesda 2001を用語として採り上げた最新版も掲載しています。Richard DeMay氏の著書「The Art and Science of Cytopathology」にも、異型、異形成およびそれより重度の病変に関する細胞診断基準の参考に用いられています。

各診断カテゴリーごとに、ThinPrep法による形態、従来のパパニコロー染色標本に対応する像の鍵となる類似細胞所見像を画像で解説しています。画像はいずれも、特に断りのない限りThinPrepによるスライドです。この画像は、ThinPrep法の染色標本に典型的な所見を図説するためのもので、個々の解釈を必要とします。

ThinPrep
法の概要

パパニコロウ標本用のThinPrep®システムは、従来の方法に換わり、異型細胞、子宮頸癌とその前駆病変など、ベセスダシステムにより定義された細胞学的カテゴリーに分類する方法として、FDAに承認されました。ThinPrep法は、さまざまな患者集団で、軽度異型扁平上皮内病変(LSIL)からさらに重度の病変の検出に、従来のパパニコロー染色法より相当に有効であることがわかっており、溶液採取(direct-to-vial)HSIL試験では、高度異型扁平上皮内病変(HSIL)以上の病変の検出に59.7%の増大が見られました。従来のパパニコロー標本染色では、資料の質も相当に改善されています。

パパニコロー法の精確性を改善するには、標本採取と染色が至適であることが重要な要素です。従来の標本の染色とThinPrep法の標本の染色に用いられる手技に差があるということは、両者の染色標本の間には顕微鏡による様相に差があることを意味しています。ThinPrep 法の画像を精確に解釈するには、ThinPrep染色法を理解する必要があります。このことは、標本の質が試料の保存と提示を左右することを考えると、特に重要なことです。そこで、ThinPrep染色法を以下にまとめました。 ThinPrep検査装置の自動処理過程には、標本の希釈拡散、膜上に細胞を集める精密濾過、顕微鏡スライドガラスへの移入があります。

ThinPrep 検査装置
―操作の基本―


ThinPrep検査処理には、まず箒のような器具か、はけとプラスティック製へらを併用して、女性患者から標本を採取します。次に、PreservCyt® Solutionの入った標本バイアルの中で、採取した器具を洗浄します。さらに、ThinPrep標本バイアルの蓋をし、表示ラベルを貼り、ThinPrep検査装置を備えた検査室に送ります。

検査室で、この標本バイアルの記載事項を、細胞診依頼用紙に書き込み、依頼書、バイアルおよびThinPrep顕微鏡スライドに、細胞診の受付番号をもらいます。このバイアルと適合するスライド、さらに使い捨て婦人科用フィルターシリンダー(未使用フィルター)を、ThinPrep検査装置に設置し、スライドを然るべき手順で操作します。この装置は、溶液中で、フィルター(T2000)またはバイアル(T3000)を回転させることにより標本を均一にします。結合物質を無作為に分解する強力な剪断力を生み出し、血液、粘液のほか診断に適さない破片は分解しますが、本来の細胞群には損傷を与えません。適切に洗浄すれば、採取した細胞が器具に全く残らず溶液に入り、従来のパパニコロー染色標本を作成したら廃棄します。このように、回転相により細胞標本を無作為化し、細胞を代表する標本をこのスライドに移すことができ、ひいては患者の上皮細胞状態を正確に反映させることができます。

こうして、細胞をTransCyt Filterの膜上に集めます。フィルター膜を貫通させる弱い陰圧装置を用いて、膜を通して溶液を吸引します。標本バイアルのなかの試料がフィルター膜上に集積し、膜の細孔が詰まると、処理装置の吸引が止まるよう制御されます。TransCyt Filterを抜ける流速は、標本によるばらつきを最小にするよう常に監視します。

処理装置が濾過段階を終了したら、フィルターシリンダーを標本バイアルから回しながら引き抜き、濾液を廃棄用容器に廃棄します。次に、フィルターシリンダーをスライドガラスまで回転させます。わずかな気圧がフィルターにかかり、フィルターからスライドへ細胞が移®します。細胞に備わる自然の接着作用とThinPrepスライドに元々ある電気化学的特性により、細胞は、フィルター膜よりスライドガラスの方に高い親和性を示し、細胞の薄層がスライドガラスの直径20mmの円周内に移されます。細胞の移入が終了すると、スライドは接触していたフィルターシリンダーから離れ、自動的に取り出されて固定液に入ります。次に、使用者がこれを取り出し、通常のパパニコロー染色および封入を実施するため、染色用の台(T2000)に置きます。T3000処理装置によりこれを実施する場合は、固定溶液を用いてスライドを固定し、通常のパパニコロー染色および封入を実施するよう染色用の台に置きます。

出典
  1. Hutchinson ML, et al: Homogeneous sampling accounts for the increased diagnostic accuracy using the ThinPrep® Processor. Am J of Clin Pathol 1994; 101:215-219.
  2. ThinPrep® 2000 System Package Insert, Hologic, Inc., 2001.
  3. TP® 2000 Operator's Manual, Rev G, Hologic, Inc., 2000.
  4. TP® 3000 Operator's Manual, Rev C, Hologic, Inc., 2000-2001.

科学的な背景
David Zahniser, PhD

偽陰性パパニコロー染色標本は、細胞診臨床検査が直面している質にかかわる重大な問題です。子宮頸部疾患を検出できないのは、標本誤差かスクリーニング誤差によるものです。偽陰性パパニコロー染色標本が60~80%に上るのは、主として標本誤差によるものです。スクリーニングと解釈の誤差が、残る誤差を説明しています。歴史的にみて、標準誤差があるのは、細胞採取時に病変が適切に採取されなかったことによるものとされました。病変は、子宮頚管では小さすぎるか、すでに重度であったことが考えられます。標本誤差が、パパニコロー染色法の感度を限定する重大な役割を演じていることがはっきりしてきました。ThinPrep® 2000システム開発における初期の研究により、従来のパパニコロー標本の染色には元々重大な欠点があることが明らかになり、標本誤差の定義にもう一歩踏み出すことができました。研究が重ねられ、現在では、標本誤差が医師によるとは限らず、厳密には手引書の染色法に限界があることによることがわかっています。

ThinPrep法の出発点とは、パパニコロー染色標本を分析するために、定量システムを開発するさまざまな研究努力が実施された時点に遡ります。1960年代、デジタルコンピュータが登場して、走査法を構築することができました。コンピュータ画像システムには、当初より手引書の矛盾した染色法による限界がありました。自動処理法による分析には、従来の子宮頚管染色標本では複雑すぎることが明らかでした。研究の多くが、機械可読染色法をめざす調製装置開発に向かいました。自動染色法の最初の世代では、原始的コンピュータが複数ではなく単一の細胞集団を解析するのに適したものにすることが目的とされていました。細胞層および細胞群を分離するため、さまざまな機械的方法が試行されました。溶液に採取される頸管掻爬物を、精力的に機械的処理にかけました。最も成功した染色器具は注射器の働きを利用したもので、口径の太い注射針により細胞標本を吸い上げ、単一の細胞集団を得ました。この器具により、コンピュータによる細胞染色の簡略化に成功しました。単一集団の希釈拡散には成功したものの、あいにくこの過程では細胞が喪失し、組織構造が破壊され、ヒトに対する解釈を損なうこととなりました。オランダの研究では、注射器による問題の一部を扱っています。細胞懸濁液の中でシリンダーを高速に回転させて用いることにより、拡散段階に近づきました。この考え方は、シリンダーがバイアルの中で回転するとき、注射器の働きに近い剪断力が得られるとするものでした。拡散シリンダーの回転速度を調節することにより、拡散の程度を操作することができると思われました。現在のThinPrep処理装置には、拡散がはるかに低速度であり、自然の細胞結合の結合性が損なわれないシリンダー拡散法が採用されています。これに加えて、標本染色をさらに至適化するため、採取溶液に改良が加えられてきました。

この拡散段階と同時に、濾過法も開発段階にありました。標本の質は、診断できない環境要素を少なくすることによりさらに改善することができると思われました。元々、標本が喪失することに絶対に必要な知見というものは存在しないことに着眼が置かれました。懸濁液から試料としての細胞を濃縮させ、単純な濾過によるアーチファクトを減らすのに、プラスチック製フィルター膜が用いられました。このフィルターの製造過程により、細孔が無作為に拡散され、この大きさが統一されました。

この染色器具には、顕微鏡スライドガラス上の懸濁液に細胞を沈殿させるというもうひとつの段階が必要でした。人による分析にも、コンピュータによる分析にも適するよう、このスライドへの細胞沈殿物を至適化するために、膨大な手技が研究されました。フィルター膜を用いて、スライドにフィルターと細胞を押圧することにより、スライドに細胞を移入させることができました。これにより、細胞層が一定な薄層になり、拡散が均一でしかも細胞形態は破壊されませんでした。

パパニコロー染色標本の自動化に新たな関心が寄せられ、細胞診の労働力不足がこれを後押しし、パパニコロー染色標本訴訟が増加しました。膨大な数のコンピュータスクリーニング装置が市場に出回っています。しかし、コンピュータ技術が進歩していても、スライド染色を一定にする必要性には変わりがありません。ThinPrep技術は、スライド染色の限界に取り組む推進力を得、しかもThinPrep技術を支持する非臨床試験ならびに臨床試験が、パパニコロー染色標本の限界を深く理解する一助になってきました。

参考文献
  1. Linder J and Zahniser: ThinPrep Papanicolaou testing to reduce false-negative cervical

THINPREP®スライドの顕微鏡評価
Deanna K. Iverson, MHS, SCT(ASCP), HTL

George Papanicolaouは、1920年代初頭、従来のパパニコロー染色法の形態学的基準を作成しました。長きにわたり、膨大な試験に基づく改良が重ねられ、十分な証拠が記録されています。従来の染色法とThinPrep法との間には、基本的な形態学的基準に差がほとんどありません。唯一の微視的差は、一般にThinPrep®システムを併用する溶液採取法によるものです。装置による処理の間に組織構築が変性せず、古典的細胞形態学が解釈に応用できるのです。ThinPrepの形態が従来のパパニコロー染色標本と類似していることは、両者の差をはるかに僅かなものであり、従来の形態学による経験をすべてに持ち込むことができます。鍵となるThinPrep法の形態学的特徴と、異常を最も精確に検出するスクリーニングの方法について、以下に概要をまとめています。

従来のパパニコロー染色標本と同じく、ThinPrep法スライドのスクリーニングには、着実に手順よく実施し、微視的領域を重複させることが必要です。ThinPrepスライド上では、細胞沈殿物の円周を基準点に用いることができます。走査用対物レンズ(4倍)を用いてスライドの高速検査を実施してから、低倍率(10倍)で組織学的評価すると、細胞構成の評価、子宮頸部組成の特定、染色の技術的質の評価という点で有益です。

細胞診および病理検査の経験があれば、ThinPrep法スライド上のさまざまな細胞種を容易に同定することができます。それでも、生物学的に複雑で、注意を要する検査が必要な場合も発生します。現在も、細胞性(正常集団と異常集団)を定量的に評価することがあり、従来の方法に似ています。もっとも、ThinPrep法スライドを用いれば、異常細胞の量はこの有無の確定ほどは重要ではなくなります。

ThinPrep法スライドの独特の特徴には、細胞染色、湿固定、細胞の大きさ、染色方法および標本の環境などの均一性があります。

細胞染色の均一性
  • 濃縮
  • 拡散の均一
  • 直径20mmの円形内
細胞の材料が溶液に採取され、さらに濾過されるため、ThinPrep法スライドの標本は、従来のパパニコロー染色標本とはいくぶん異なった様相を呈します。従来のパパニコロー染色標本の厚さには斑があり、自然乾燥したアーチファクトが混入し、さらに細胞の試料に機械的変形が多く見られます。ThinPrep法スライド上では、細胞材料が直径20mmの円形部分で濃縮し、均一に拡散されます。上皮細胞の層は観察されますが、細胞の重層は多くありません。

湿固定
  • 溶液中の細胞の集積
  • 細胞質内容像の増強
  • 液体ベースの固定溶液
  • 核の形態像の増強
  • 過染のばらつき
湿固定:ThinPrep法スライドが独特であるのは、細胞材料を採取し、液体ベースの固定溶液の中に入れることです。細胞は溶液中で集まる傾向にあるが、それでもThinPrep法スライド上ではさまざまな細胞種の識別が容易であるという点で、ThinPrep法スライド上の細胞形態は婦人科以外の標本に似ています。子宮頚管細胞が立体的に見え、子宮内膜細胞と混同する可能性があります。子宮頚管細胞の柵状配列構造が、高倍率の検査で細胞群の周辺に見られることが多い。

ThinPrep法液体ベース固定溶液には、メタノールが含有され、細胞の保持と核の形態を良好にしています。細胞質の内容像を増強することにより、細胞の系統および成熟の段階を正確に判定することができます。核の形態像の増強は、主として湿固定によるものです。核が過剰解釈される可能性があり、ThinPrep法スライドを評価する際には、十分に保持された核を過剰解釈しないように留意します。ThinPrep染色に観察される核像の増強は、95%エタノールを用いて湿固定された従来のパパニコロー染色標本に見られる増強に似ています。

従来のパパニコロー染色標本では、典型的に扁平上皮病変を示す核の過染が見られるが、ThinPrep 法スライドではこのようなことが少なくなります。このことから、ThinPrep法スライドでは、過染は信頼できる指標ではありません。過染が認められたら検討する必要はありますが、過染が認められないからといって、核の異常を軽視してはいけません。ThinPrep法スライドでは、従来のパパニコロー染色標本で、見過ごされたり、見極めが付かなかったりすることの多い形態学的基準である核の大きさと形状の差に頼らざるを得ないことから、過染が認められない場合、重度病変の正確な解釈が特に難しくなります。

細胞の大きさ
  • 比較的小型
  • 単一の細胞種が著明
細胞の大きさ:湿固定法により、ThinPrep法染色における細胞は比較的に小さく見えます。細胞の大きさと核の大きさを判定するのに、良好に保持された中層細胞が有用な基準になります。これは、小型で未熟な化生細胞の評価および解釈に特に重要です。この細胞は高倍率で判定し、特に過染が認められない場合には、核異型を慎重に評価することが肝要になります。

単一の細胞種が拡散し、ThinPrepシステムの特徴である「無作為抽出副標本」(randomized sub-sample)の一部に見えます。血液および炎症がこの細胞を取り囲んでいるわけではないことから、従来のパパニコロー染色標本よりもこの染色の方に単一の細胞種が多く見られます。

染色方法
  • 古い染色法の除外例
  • 環境の改善
染色方法:一般に、ThinPrep法スライド上の細胞構造と条件的環境が、良好に維持された従来のパパニコロー染色標本に観察されるものに似ています。ThinPrep 法スライド上の細胞試料は、一様であり均一に分布しています。組織構造(層および合胞)が維持され、機械的変形が相当に減少しています。

背景:従来のパパニコロー染色標本とは異なり、ThinPrep法のスライドの背景は一般にきれいです。ThinPrep染色の環境はきわめて清潔であるため、正常細胞集団と異常細胞集団とを識別するのが容易です。ThinPrepスライド上には、血液、粘液、炎症および壊死物質の存在が現れるが、この実体は、採取および染色の差により、従来のパパニコロー染色標本に観察されるものとは、わずかに異なって見えます。ThinPrep法スライドの血液および炎症の存在が、まれに見えにくいことがあります。ただし、それがパパニコロー処理時に、患者から採取した材料に圧倒的に多い場合を除きます。液状媒体中の溶血因子により、新鮮血が溶血し、赤血球の色が喪失します(「ゴースト」細胞)。古い血液は完全に溶血せず、多染性を見せます。古い血液と新鮮血を識別することができるのは、悪性腫瘍の処置を検討する際、有用であると言えます。

炎症性物質であれば、ThinPrep法スライド上で均一に拡散し、上皮細胞に付着しているように見えることが多いです。この背景は、ときに「汚らしい」様相を呈することがあります。スライド上の試料が汚れてぼろぼろに見え、扁平上皮細胞が良好に保持されることはほとんどありません。このような背景が観察される場合には、以下のことを考慮することが重要です。感染因子、細胞融解や悪性腫瘍(腫瘍性背景)の存在です。もし存在すれば、ThinPrep法スライド上の染色の標本全体にわたって、腫瘍性背景(炎症細胞、赤血球、フィブリン、壊死細胞片および顆粒状タンパク物質)が、上皮細胞を取り囲んでいるか、覆っている(「付着している」)のが観察される可能性があります。

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