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GYNアトラス第4節a

扁平上皮細胞

異型扁平上皮細胞
Richard A. Smith, MD, PhD

異型扁平上皮細胞(ASC)は診断分類で最も議論のあるところです。2001年のベセスダシステム(TBS)の改定により、新しい用語ができました。TBSは、反応性の変化に起因するものよりも著明な異常扁平上皮が認められる場合、ASCカテゴリーを診断考慮するべきであるが、軽度または高度扁平上皮内病変の診断基準が定量的または定性的に不足しているとしています。さらに、TBSは、「明らかにされていない有意性(異型扁平上皮細胞―意義不明)」または「高度扁平上皮内病変の可能性を除外できない(異型扁平上皮細胞―高度扁平上皮内病変を除外できず)」という診断の基準を満たすことの重要性を強調しています。

ASCの形態学上基準を示す章を執筆している細胞検査士および病理医がASCを適切に分類して、この解釈に主観性を与えようとしています。TBSの導入以来、従来のパパニコロー染色標本を解釈している細胞病理関係者は、この分類が困難な症例を「何でもほり込めるゴミ箱的」なカテゴリーとして利用する可能性があります。

乾燥または部分的に不明様な細胞などの従来のパパニコロー染色標本にありがちなアーチファクトにより、ASCと診断されることがあります。反応性細胞の明らかな異型性の度合いも乾燥または標本作製のしかたによって強くなります。これにより、疑わしい細胞の核所見の詳細を適切に見るすることが難しいアーチファクトは、細胞検査士および病理医が確定診断を下せない結果に終わります。

ThinPrepプロセスで用いられている湿固定により、病理医および細胞検査士がASCを「すべて取り込む」ことを避け、反応による細胞変化、明らかな異型扁平上皮および異型病変による細胞の変化を識別することが可能になります。ThinPrep Pap Testの導入 により異型扁平上皮細胞の解釈が除外されるわけではありませんが、ラボスタッフが自分たちの形態学的基準を改め、不適切な標本による「異型扁平上皮細胞」症例を除外し、真の異常症例を明らかにする機会です。

ThinPrep Pap Test®は、塗抹標本およびスプレー固定でのアーチファクトに特有のトラブルを最小限に抑えます。これにより核所見が明瞭になり、診断がより確実になります。通常、異型扁平上皮細胞カテゴリーに分類される上皮細胞は、軽度扁平上皮内病変または高度扁平上皮内病変の診断に至らない変化を見せる成熟上皮および扁平上皮化生細胞です。 核はわずかに増大しており、同じ種類の細胞の通常の大きさに相当します。 核には軽度の核縁不規則性が見られますが、滑らかな方が多く見られます。化生細胞について、不規則性が空胞のために核が異常化したのではないことを考慮する必要があります。クロマチンパターンは微細な顆粒状で均等に分布しています。 クロモセンターまたは核小体は通常、反応性の鑑別診断が他の基準の有無を考慮する必要がある部位の異型化と同時に反応性変化が起こらない限り目立たないか存在しません。

従来法とThinPrep®のいずれのスライドでも、異型扁平細胞の見方は、上皮細胞の異型、異型扁平上皮化生および異型錯角化を含まれこれらのみに限らないさまざまな細胞変化のいずれかによって起こる可能性があります。ThinPrep Pap Testでの異型扁平細胞の基準は以下のとおりです。

類似細胞像

反応性 異型扁平上皮細胞―意義不明 軽度扁平細胞上皮内病変
細胞核 1.5倍から2倍に拡大、平面 2~3倍に拡大、最小焦点深度に対して平面 3~4倍に拡大、わずかな焦点深度
核膜 滑らか 滑らかであるか軽度の不規則性 滑らかであるか軽度の不規則性
クロマチン 微細な顆粒状、均一に分布 微細な顆粒状、均一に分布 顆粒状よりもわずかに微細。均一に分布
核小体/クロモセンター 微細なものから目立つ大きさまで。多発することもあります。 目立たないか認められないかのどちらかです。 存在しません
細胞質の特性 核周囲間隙の存在 疑わしい空胞 診断的ヒトパピローマウイルス空胞
二層性染色 存在しうる 存在しない 存在しない

以下の画像はThinPrep® Pap Testにより、反応性変化、異型扁平細胞および軽度扁平上皮内病変であると判断される検体です。

さきに述べたように、ThinPrep® Pap Testの採用により、異型扁平細胞が除外されるわけではありません。実際、よりよい細胞保存(すなわち液状固定)により、ThinPrep スライドの顕微鏡的評価に関する導入部分での議論として液状固定の結果にASCがなじみのないものであるとして、核およびクロマチンの変化を強めに読まれる恐れがあります。ラボスタッフは、ThinPrep Pap Test導入直後に、異型扁平細胞分類の使用頻度が一時的に増えることを経験し、従来のパパニコロー検査での経験より低い検出率を目の当たりにするという状況になります。

異型扁平細胞がTBSのカテゴリーとしてある以上、人間による主観的な判断や様々な基準の読みを行うため病理医はこれを用いることになります。また、重要なことは、軽度扁平上皮内病変よりも少ない細胞の形態学的摂動を起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の生物学的特質です。ヒトパピローマウイルスによって起こる形態学的変化は軽度扁平上皮内病変を扱う節で詳しく述べています。異型扁平上皮細胞の原因としてのこのウイルスの役割は、ThinPrep Pap Testバイアルでの材料の補助試験を通じてウイルスのリスクが高いか低いかの確定による異型扁平上皮細胞の相対的リスクがあるか否かを決定する機会を作ることにあります。

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