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Study

GYNアトラス第4節d

扁平上皮細胞

扁平上皮癌
R. Marshall Austin, MD, PhD

扁平上皮癌(SCC)は子宮頚部で最もよく見られる悪性腫瘍です。ベセスダシステムでは下位分類は必要としませんが、臨床的には一般に、この腫瘍をさらに非角化型および角化型に分類します。

各病型のそれぞれの特徴を考察する前に、全般的な観察所見を示します。角化型および非角化型扁平上皮癌の細胞は、いずれも上皮内癌の細胞よりも大きく、明らかに扁平上皮様の特徴を示します。悪性腫瘍の診断には核の形態観察が役立ちますが、病変が非角化型であるか角化型であるかを細胞診断医が判断するには、主として細胞質の特性が用いられます。従来のパパニコロー染色標本では、豊富な出血が乾燥アーチファクトに沈殿して細胞が不鮮明になることがあるほか、乾燥および塗沫標本アーチファクトのため癌細胞がゆがめられて、確実な診断が得られないことがあります。ThinPrep法では、アーチファクトによる変形を生じることなく多形性の変化を観察することができ、さらに、出血を溶解して不鮮明な状態を避けることができます。

ThinPrep法による扁平上皮癌分類基準は次の通りです。

非角化型扁平上皮癌 角化型扁平上皮癌 小細胞扁平上皮癌
細胞型 非角化型扁平上皮細胞 角化型および少数の非角化型扁平上皮細胞 未分化扁平上皮細胞
組織像 合胞体が主体、散在性の孤立細胞 少数の集団と優勢な孤立細胞 孤立細胞、集団および合胞体
細胞質像 空胞化、好青性 高密度、角化 繊細、乏しい、好塩基性
核膜 著明な膜の不規則性 膜の不規則性 核膜がスムースまたはわずかに不規則性
クロマチン 粗で不均等に分布、明確なパラクロマチン消失を伴う 核濃縮、 クロマチン増量、多形性 粗で一般に均等に分布、クロマチン増量
核小体 著明な巨大核小体 時に巨大核小体が見られる +/- 目だつ核小体
腫瘍性背景/壊死 +/- +/- +/-


非角化型扁平上皮癌
非角化型扁平上皮癌の細胞質は一般にライトブルーの好染性であり、高密度でわずかに空胞化が認められます。この細胞質の空胞化のため、細胞検査士の判断が腺病変に傾くこともありますが、細胞の分類基準に従ってやはり扁平上皮のカテゴリーに分類すべきものです。非角化型SCCのグループは、腺癌よりも細胞質の境界が不明瞭であり、「ずっとフラットな」シート状を呈します。また、ロゼット/腺房形成、波形縁、円柱上皮細胞分化、核の紡錘化および重積など真の腺癌の特徴は見られません。

核が腫大し、核/細胞質比(N/C比)はCISよりも中等度異形成のN/C比に近くなります。悪性腫瘍の核の典型的な特徴から、これは扁平上皮内病変ではなく癌と判断します。クロマチンパターンはきわめて多様であり、パラクロマチン消失化が著明で、粗顆粒状、不規則な分布を示します。 核膜はきわめて不規則であり、不規則な形状の大きな核小体が頻繁に見られます。ここではこのような特徴から、悪性腫瘍との診断を確定します。

腫瘍性背景は浸潤癌の重要な特徴です。従来のパパニコロー染色標本では、全体として浸潤癌の50~80%に背景が見られます。背景が認められる率はThinPrep® 法の標本でもほぼ同じですが、従来のパパニコロー染色標本で見られる腫瘍性背景/壊死の典型的なパターンとは異なるものとなります。ThinPrep Pap Testでは、背景自体が凝集する傾向にあり、出血、フィブリンおよびタンパク鎖、壊死組織、壊死細胞片を含む「見苦しい」デブリが集まり、辺縁がほつれたような外観を呈します。このような材料の上皮集団への付着も認められます。

の腫瘍性背景をみる上で重要な類似細胞所見が、細胞融解、炎症および萎縮です。この状態はいずれも汚く「見苦しい」背景を示し、与えられた上皮材料のなかのスクリーニングで、背景の原因を明らかにするのに役立ちます。どのような状況でも、細胞検査士はひとつの判定基準だけをもとに診断してはなりません。唯一存在するのが見苦しい背景だけである場合には、確定診断を下すことはできません。確定診断の鍵を握るのは、上皮細胞核に見られる悪性腫瘍の形態的特徴です。

角化型SCCでは、非角化型と異なり、多形性の高度に角化した扁平上皮細胞が見られます。このような細胞は大きさも形も実にさまざまであり、孤立性に現れることが多く、ごく少数の集団または合胞状配列も認められます。

ThinPrep®法では、紡錘型、尾状オタマジャクシ型などの奇妙な形状の扁平上皮細胞が特徴的な画像として現れます。このような変形は、塗沫標本アーチファクトによるものではなく、真の多形性を示すものであると確信をもって判断できます。細胞の大きさもそれよりもさらに重要である形状も、細胞間でのばらつきが強調されるため、角化型SCCと角化型異形成病変とを判別することができます。同様に、核の大きさと形状にも多様性が認められます。核は、クロマチンがいわゆる「インクブラック(墨色)状」と呼ばれる著明な増量を示し、豊富な角化により「ゴーストのような」脱核も見られることがあります。 豊富な角化により認められるもうひとつの特徴が、細胞体から伸びた細胞質の角化突起(ブレブ)です。 この特徴によりさらに多形性のある像となり、異型錯角化および角化LSILとの鑑別がしやすくなります。

小細胞扁平上皮癌
ThinPrep®法を用いて小細胞(扁平上皮)癌を判定することができます。この病変は、一見すると比較的均一に見える小型の低分化上皮細胞からなっています。この細胞の異常を際立たせる重要な特徴に、きわめて高いN/C比があります。細胞質は乏しくもろい様相を呈し、孤立性および集塊状に「裸核」が現れることもあります。合胞状の集団は腺性の集塊にそっくりですが、腺癌の古典的な様相である円形で立体的な特徴は見られません。 核は小さく、大きさもわずかにばらつきがあり、核膜はかなりスムーズです。クロマチンパターンは粗顆粒状であることが多いですが、均等に分布する傾向にあり、クロマチン増量も認められることがあります。ThinPrep法では迅速な固定法を用いているため、核小体も見られます。
類似細胞所見/鑑別診断
角化型扁平上皮癌は、非角化型ほど診断上の問題は多くありません。高度に角化した異形成は、ThinPrep法でも、従来のパパニコロー塗沫標本のように癌とそっくりに見えることがあり、この鑑別に関しては注意して判断する必要があります。類似像の説明にあたっては、診断がはるかに難しく、複数の鑑別診断が生じる可能性のある非角化型を取り上げます。
非角化型SCC 修復 腺癌
全体像 焦点深度が集団の中心にある合胞状シート、辺縁の扁平細胞、集団および少数の孤立性細胞を認める。 扁平なシート状 立体的集塊、孤立性細胞
細胞型 扁平細胞 子宮頚部/上皮化生細胞 腺細胞
細胞質 高密度、ときに空胞化
細胞質の境界が不規則性、屈曲
焦点深度が中心の浅い位置にある集団の辺縁がフラット
菲薄、空胞化
培養細胞の様相
フラット、突出
離散した空胞
集塊と細胞との境界が明確で著明
円形
不規則性、鋭角 均一でスムースな膜 不規則性、波状核膜
クロマチン 凝集、不均等な分布、パラクロマチン消失 均一、クロマチン増量 細から粗顆粒状、均等な分布、低量から大量クロマチン(ステルスグレー色)
核小体 ときに巨大核小体
不規則、単数または複数
著明、ほとんどの細胞に存在
小さい、均一、ときに多数現れる
著明な巨大核小体
大きい、円形


病変が低分化で、上皮型を特定できない場合があります。これは、従来のパパニコロー塗沫標本でもThinPrep®法でも同じです。しかし、上に記載した推奨分類基準に従うことにより、さらに正しい診断が下しやすくなります。

参考文献
  1. Guidos, BJ et al: Use of the ThinPrep Pap Test in clinical practice. Diagnostic Cytopathology 1999;20:70-73 (Supplement to Ob.Gyn. News)
  2. Clark, S et al: Invasive Squamous Cell Carcinoma in ThinPrep Specimens: Diagnostic Clues in the Cellular Pattern. Acta Cytologica 2000; 44:861 (Poster Presentation)
  3. Inhorn, SL et al: Validation of the ThinPrep Papanicolaou Test for Cervical Cancer Diagnosis. J. of Lower Genital Tract 1998; 2:208-212
  4. Hutchinson, ML, et al: Evaluation of Conventional versus ThinPrep Cervical Smears in a Population-Based Study of 10,000 Women in Costa Rica. Acta Cytologica 1995; 39:969

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